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雀のお宿と不出世の詩人

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群馬県碓氷郡磯部町(現安中市磯部)は、かの有名な昔話「舌切り雀」の発祥の地とのこと。自分がこのことを知ったのはつい最近のことでした…

昨年から今年にかけて群馬県に出向くことの多かった自分。お話の発祥の地に出かけたのは一か月ほど前のことです。その際に宿泊したのが「舌切雀のお宿」と自ら称する磯部のホテルです。その施設内には小さな展示コーナーがあり、数人の芸術家の作品や「舌切り雀」にまつわる展示品が並んでいました。


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こちらは舌切雀神社の宝物です。この鋏で雀の舌を切ったのかどうかは定かではありませんが、かなりの年代物ではあるようです。舌切雀神社はホテルからそう離れていない磯部詩碑公園内にある神社。時間があれば散歩がてら歩いてみたいと思いましたが、時間がなく訪れることはできませんでした。


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こちらの紳士の写真を見てかなりの衝撃を受けた自分。この方とこんなところで再会するとは夢にも思いませんでした。彼の名前は大手拓次、磯部出身の詩人です。有名ではありませんが、優れた詩人の一人であると私は思います。じつは若い頃、彼の詩集をよく読んでいました。

上州・群馬出身の詩人と言えば萩原朔太郎でしょう。詩集『青猫』『月に吠える』はあまりにも有名です。そもそも私が大手拓次という詩人を知るきっかけとなったのは朔太郎と彼の間に親交があったから。官能的かつ視覚的な朔太郎の詩に魅力を感じた自分は、朔太郎が「影響を受けた」と話す大手拓次がどのような詩人なのか知りたくなったわけです。

大手拓次の詩はとても繊細で、妙に琴線に触れたことを覚えています。たまに思いもつかない比喩があったりしますが、なぜかしっくりと心にとけ込んでくる不思議な詩を書く人でした。

とても素敵な詩を残した詩人ではありますが、知名度はそれほど高くありませんでした。彼の作品のクオリティを考えると、不出世の詩人と思えてなりません。そもそも彼は超がつくほどの恥ずかしがり屋だったそうで、有名になろうなんてことは考えなかったのかもしれません。今で言うサラリーマンをしながらずっと詩作をしていたそうですから…

そう言えば、ホテルの人の話だと宿泊した「磯部ガーデンホテル」は大手拓次の大叔父が創業したとか。


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さて、ほかにはこんな写真も展示されていました。疎開中の子どもたちの写真です。戦時中でありながらも、子どもたちには笑顔が見られます。緊張と逼迫の時代であった当時、子どもたちのこの笑顔は大人たちにとって救いになったのではないかと想像します。それにしても、このような写真をよくぞ撮り残しておいたものだと感心します。きっと、この地域には空襲はほとんどなかったのでしょう。そうでなければ写真を撮る余裕なんてないでしょうから。


(冒頭の写真は伊香保町にある五徳山水澤観世音です)

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