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土の中のもうひとつの宇宙

110220
自分はほとんどテレビを見ません。なので、お笑い芸人の名前と顔が一致しませんし、AKB48という人たちも見たことがありません。でも、まったくテレビを見ないわけではないのです。ついていれば目を向けますし、おもしろそうだったらしばらく前に座ったりもします。

たまにしか見ないので、私の目にはコマーシャルがとても新鮮に映ります。最近目にとまったのはアステラス製薬のCMです。アステラスは山之内製薬と藤沢薬品が一緒になった製薬会社ですが、CMでは「土を調べている」ということをPRしていました(未来の種だか薬の種だか忘れましたが、とにかく役に立つものを探しているというニュアンスでした)

彼らがやっているのはたぶん放線菌探しだろうと思います。でも、「放線菌」という言葉は一度も出てきませんでした。もしかしたら違うものを探しているのかも? と不安になりますが、放線菌に違いないと自分は思っています。

放線菌は土壌に多く生息する菌類で、独特な抗生物質や生理活性物質を生産する種が多数いるそうです。なので、製薬会社は躍起になって土を調べているということを耳にした記憶があります。きっと熱帯雨林の土から寒い地域の土まで、地球上のあらゆる場所の土を集めては分析しているのでしょう。

事実、放線菌の培養液からは結核の治療薬として知られるストレプトマイシンが見つかっていますし、MRSA(メチシリン耐性菌)に対抗できる最終兵器と言われたバンコマイシンも見つかりました。また、農業関係の方なら必ず耳にしているEM菌というのも放線菌の一種らしいです。ついでに言えば、腸内の善玉菌として有名なビフィズス菌さえ放線菌の一属というではありませんか。

【余談】:もう何年か前のことですが、最強の抗生物質と謳われたバンコマイシンさえ効かないVRSA(バンコマイシン耐性菌)が現れたと聞いたときには、この先いったいどうなるのだろう? と心配しました。

とにもかくにも、放線菌の研究は超ホットな分野であることは間違いありません。今までにない発見をもとに薬の実用化に漕ぎ着ければ、とてつもない金額が市場を飛び交うことになるはずです。それが人の命や人類の未来さえ左右する発見だったらなおさらのことでしょう。

【余談】:たぶん、生物学のうち微生物を専攻している学生さんのなかには将来を見越してこの分野の研究室に飛び込んでいる方も多いと思います。

これほどホットな分野にも関わらず、あまり注目を集めないのはなぜなのでしょう? きっと研究対象というか目標物が目では確認できない微生物だからだと思います。土の中というととても地味な印象がありますし…

でも、土の中には宇宙に匹敵するほどの謎やドラマが隠され、未知の世界が広がっているのではないでしょうか。大雑把な括りで菌類と表現しますが、彼らの活動はすべての生きものの生命活動の鍵を握っているのではないかと妄想する私。この分野に関してはまったくの素人の私ですが、菌類に対する興味は尽きそうにもありません。


また、一方では個人的にこんなことも…

研究の成果というものは評価されればこの上ない栄誉となりますが、そこに至る過程は一般の人には想像もつかない地道な作業の連続です。大袈裟な表現をすれば「世の中にこんな地味な仕事があるのだろうか」と思うほどでしょう。自分も研究職というものにはものすごい憧れを感じますが、この地道な作業の途中で嫌気がさしてしまうのではないかと想像してしまいます。

でも、もし人生が二度あるなら、菌類の研究もしてみたいなぁ…などと思うのであります。しかし、人生は一度しかありません。せめてきのこの観察を通じて菌類の世界に片足(つま先ぐらいかな?)を突っ込んでおこうと思います。

(最後になりましたが、冒頭の写真はニガクリタケだと思います)

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