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奇跡の風が吹く山…鳥になる人たち

Once I rose above the noise and confusion
Just to get a glimpse beyond the illusion
I was soaring ever higher, but I flew too high…

(Kansas : Carry on Wayward Sonより)

石岡市(旧八郷町)と境を接する桜川市(旧真壁町)。両市の境に横たわっているのが阿武隈山系の筑波山塊です。筑波山から北に向かって、きのこ山、足尾山、加波山(かばさん)、燕山などが連なっています。

この山並みの数か所にハングライダー・パラグライダーの離陸場所があります。いわゆるスカイスポーツのスポットであり、関東ではちょっと有名な山々になっているそうです。特に足尾山にある離陸ポイントは西にも東にも飛び立てるテイクオフポイントで大勢の愛好者が集まります。



本日は雲一つない青空で、風もそれほど強くない穏やかな天気でした。

「こんな日にどこにも出かけないのはもったいない」

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そんな思いで頭がいっぱいになり、家に居たらとても損をした気分になりそうだったので無理矢理出かけました。本当は吾国山(わがくにさん)に登って上の写真の那須連峰を眺めたかったのですが、子どもに拒否されてしまい行き先を変更。車で行ける眺めのいい場所として思いついたのが足尾山のハングライダー離陸場所でした。

コーヒーでも飲みながら、車内からのんびり那須連峰を眺めようと思っていたら…

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お〜っ、スカイスポーツを楽しむ人たちでいっぱいです。今日は彼らにとっても絶好の天気だったようです。現場には大きな翼がたくさん並んでいたので、仕方なく離れた場所に車を停めて山並みが見える離陸ポイントまで歩きました。

お天気は良かったのですが山の上は風が強く、平地とは違って冷たい風が山麓から駆け上がってきます。そ、そりゃそうですよね、この上昇気流を利用して離陸するわけですから。何の防寒対策も講じずにのこのこやってきたおとぼけ親子はそんな凍てつく風にもめげずに、離陸シーンを見ようと震えながらその場に立ちつくしていました。おやじはかじかんだ手で必死にデジカメのシャッターを切ります。

(一説によると100メートル登ると気温は0.6℃下がると言われています。足尾山の標高は627.5mで平地より3.6℃低いことになります。さらにハングライダーが飛ぶ上空は低くなるはずです。きっとこの日の上空は氷点下ではないかと思います)

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「ヤッホー!」。そんな歓声を上げて飛び立つライダーたち。

わかります、その気持ち。見ている方も自然とヤッホーと叫んでしまいます。事実、おとぼけ親子も離陸の瞬間にあわせて声を出していました。特に子どもの声は大きく、目をキラキラ輝かせながら飛び立つ人に手を振っていました。

飛んでみたいとは思いますが、とてもとても恐くて…自分にはできそうにもありません。でも、飛び立つ人たちの姿に自分の思いを重ねることで、彼らが享受している爽快感や開放感、満足感を少しだけ味わうことができました。頭上で旋回するハングライダーの風切り音がよく聞こえたのがとても印象に残っています。



「ここはね、太平洋側・日本海側に高気圧が陣取った時に、両方の影響でいい風が吹くことが多いんですよ。ときには低気圧のこともありますけどね」

そう話すのは、その場にいた50〜60代の男性。彼の言っていることがわかったような、わからないような…

山並みは南北に伸びているので、斜面は東西に面しています。東西の延長線上には太平洋と日本海があるので、確かに上昇気流が発生しやすい条件が整っているのでしょう。日本全国にスカイスポーツのスポットがあると思います。そのなかでもフライトに関わる好条件を満たしているのが足尾山の離陸スポットらしいです。

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毎年3月にこの足尾山周辺の山々をスタート地点とした大会があるそうです。飛行距離を競うクロスカントリーというカテゴリーの大会だと50〜60代の男性が言っていました。今までの最高記録では福島県の二本松市まで飛んでいった人がいるそうです。飛行距離にして150〜160キロとか言っていました。なんだかとてつもない冒険のように思えます。きっと飛んだ人は鳥になった気分を味わえたことでしょう。

飛行機に乗って眺める下界のようすと、ハングライダーから眺める景色とは大きな違いがあるような気がします。ハングライダーは生身の体で風を受け、呼吸をしながら飛行しているわけです。もちろん飛行機とは高度が違います。その臨場感と肉眼に飛び込む情報は、とてつもなくリアルなものでしょう。山から下界を眺めただけでも素晴らしいと思うのですから、上空を移動しながら味わう眺望は、感動を遥かに越えて“不思議”の領域に達するだろうと想像します。

地図のなかに鳥瞰図と呼ばれるものがあります。立体的に感じられるその地図を眺めるたびに「これは鳥だけが見られる風景なんだろうなぁ」と、鳥たちに対し一種の憧れを感じたものです。きっと、ハングライダーに乗った人たちは私の憧れをいとも簡単に手に入れているんでしょうね。とってもうらやましいです。



埼玉から来たという青年にも話を聞いてみました。

「パラグライダーの離陸ポイントは埼玉にもあります。でもハングライダーのポイントは他県に行かなければないんですよ」

ハングライダーの組み立てをしていたその青年は手を休めて話してくれました。

「関東一円にハングライダーの離陸スポットはいくつかありますけど、私はここしか利用しません。今後もほかの場所に変えることはないと思いますよ」

この足尾山の離陸場所は他の場所に比べて、飛行可能な日数が圧倒的に多いそうです。とにかく地理的な条件に恵まれた場所だそうです。大袈裟な言い方をすれば、人を大空に導く“奇跡の風”が吹く山なのです。

う〜ん、こんな希少なスポットがあるにも関わらず、知っている人はごく小数。ここでも茨城県の宣伝下手は健在ということでしょうか。とほほ…

がんばれ、茨城県!


余談ですが…
すっかり春めいた陽気に浮かされてお気軽ドライブ気分で出かけた親子は、数十分後に山の恐ろしさを知らされることになります。山中のヘアピンカーブの所々には、冬の魔物が今も牙をむいて待ち構えていました。そうです、恐怖のアイスバーンです。

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「今さら引き返すわけには…」と思いつつ、注意深く走行してなんとか乗り切りました。数か所で、列車のポイント切り替えのようなへんな横滑りを幾度となく体験。まさに手に汗握る初春のドライブとなりました。

すでに三月の声を聞いていますが、みなさんも山に出かける時にはご注意を。茨城県南部の山でさえこの様子ですから、栃木・群馬の山はなおさらです。

ちなみに、わが家の車はノーマルタイヤでした。スタッドレスなら大丈夫かもしれません。“かも”ですよ、かも。(保証は致しかねます)


(撮影:2011.3.5/石岡市・旧八郷町)

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