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鉄ちゃん垂涎の終着駅/「旅を見つける旅」完結編(後編)

“仕事”という暴走列車の通過待ち合わせのため、ブログの更新が大幅に遅れました。


「旅を見つける旅」の後編は、これといった盛り上がりもなく淡々と終着駅に向かう道のりを紹介することになりそうです。


渓谷を走るローカル列車の車窓の向こうに見える絶景。燃えるような紅葉を想像していた私の目に映ったのは…



山形県の米沢を出発した米坂線・キハ110。すでに新潟との県境に近づいています。このあたりは渓谷の景色としてはクライマックスの区間です。ところが、ところがです。この区間はあまりにもトンネルが多い区間で、渓谷の景色を長時間眺められないのです。うぉ〜っ、なんたる誤算!


よ〜く、道路地図を見ていればそんなことにすぐさま気がついたはず。とほほ。


どちらかというと、自分は不注意且つおっちょこちょいの性格。忘れていました。自分の特性を。


正直に申し上げましょう。米坂線に乗る自分を想像したときから、頭のなかは紅葉の景色一色に染まってしまい、ほかに何も見えなくなっていました。

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呆然としている自分を鼓舞しながら、やっと撮ったのがご覧の一枚。ローカル線と言えどもそこそこのスピードが出ています。自慢のデジカメ・リコーCX3ですが、私の眼力と腕が悪いせいでワンテンポ遅れたシーンしか収められません。ほんの数カット撮影して諦め、座席にもどっておとなしくしていることにしました。


渓谷を造る荒川は、新潟県に入ってしまうと川幅がグンと広がり、緩やかな流れになります。その景色が予想外に素敵な景色で、思わず見とれてしまいました。


見とれてしまう=写真は撮っていない。そうなんです、カメラを構えることさえ忘れ、ぼぉ〜っと眺めてしまいました。


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そして、ローカル線の旅は終着駅・坂町駅でいったん小休止となります。

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ここが坂町駅のホーム。静かです。とても静かです。

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とりあえず、挨拶代わりに駅の風景を数枚カメラに収めることに。

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ところが、ここに写った風景の一部が鉄ちゃんのS君を異常に刺激することとなります。


それがこの風景。一般の方にはどうということはない駅周辺の風景でしょう。

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さらにもう一枚。こちらなど、外壁が落ちて崩れかかっている廃工場って感じです。でもここにはS君をとてつもなく熱くさせるものが写っているのです。


「あそこまで行こうぜ!」。そう言うなり歩き始めるS君。雨がぽつりぽつりとするなか、上着のフードを被ってついていく自分。

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坂町駅の改札をいそいそと通り過ぎ、駅前を歩き始めるおやじ二人。

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坂町駅前はホーム以上に静かでした。広い駅前通りです。高い建物がないことも影響しているせいか、妙に開放感がある駅前です。地方の駅らしくてとても好感が持てます。人によっては寂しい駅前と言うかもしれませんが、自分はこんな空気感がとても好きです。


そんな郷愁に浸っている私のことなどおかまいなしにS君はすたすたと先を急ぎます。

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待ってました! と言わんばかりの距離に、向こう側に渡る跨線橋があります。まるで仕組まれたかのような展開です。こうなると、S君を主人公にしたストーリーが繰り広げられるのは火を見るより明らかでした。長年の付き合いでこうしたことが度々、しかも突然起こることが幾度となくありました。まるでデジャヴを見るような気分の私…

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「見ろよ! これ。何だかわかるかい?」


「はぁ〜ん、タンクだな」


「そうだよ。でも、ただのタンクじゃないぜ。これはよぉ〜、SLの水を補給するタンクなんだぜ」


しばらくしてわかったことですが、坂町駅を区間に含む羽越本線にはイベント用のSLが走っているそうで、今でもこのタンクは現役で活躍しているそうです。そんな情報さえ、S君にかかれば瞬時に収集可能なのです。恐るべき鉄ちゃんの行動力。帰路につく前、駅員と何やら親密に話しているS君の姿を見たので、その時聞いてきたのだと思います。

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S君を異様に熱くさせた物体をアップにしてみました。この緑色の小さな橋のようなものが彼のエナジーを一気に開放させることになります。


「これはよぉ、転車台って言うんだよ」


この緑の台の上にSLを載せて回転させるそうです。電気機関車・ディーゼル機関車の導入で不要になり各地で撤去が進んでいます。


「きみ〜っ、こりゃぁものすごい貴重なものを見たってことだぜ!」


超ど級の興奮状態に面食らい、返す言葉もない私にS君は次の鞭をくれます。

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「見ろよ、これ! これなんだかわかるか? ここにSLがずらりと並んでいたんだぜ!」


単なる廃屋、いや廃工場だと思っていたものは「扇形車庫」と呼ばれるものだそうです。写真の左下部分を見るとわかるように、二本のレールが扇状に車庫へ伸びています。ちょうど転車台が扇の“要”の部分と言えるのではないでしょうか。


さらにヒートアップするS君。


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車庫の脇で何かを叫ぶS君。両腕を天に伸ばし垂直に振り下ろしています。その二本の腕は鉄道のレールを意味しているようです。


「この車庫の脇にもうひとつ車庫があったんだぜ。その証拠に線路の形跡がある!」


もう独壇場です。誰も止めることはできないでしょう。


並の人が聞いたら“どん引き”間違いなしの大袈裟な身振り付きの解説。ここで私も一歩下がって冷静に聞いていたいところですが、半歩ぐらい前に身を乗り出してしまいます。そんな微妙な反応に、鉄ちゃんの素質が潜んでいる自分を感じてしまいました。

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一通りの熱い解説を終えたS君は、満足げに坂町駅に戻っていきます。足元には鮭が彫られたマンホールの蓋がありました。そこには荒川町と書いてあります。すでにここは村上市になっているはずですが、マンホールの蓋はそのままのようでした。

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坂町駅から米沢へ帰る気動車はE120のオレンジの車両でした。

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こちらは羽越本線を走る車両。電気機関車ですね。詳しいことはわかりませんが、これはかつて常磐線を走っていた車両と同じではないでしょうか。色は違いますが、とても懐かしく思いました。正直に申し上げて、現在の常磐線の車両より写真の型の車両の方が私は好きです。

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こちらは今泉という駅で停車したときに撮った車両。雪かき用の車両でしょうか。ラッセル車というのかもしれません。詳しくはS君に聞けば何でも教えてくれるのですが、車両には他のお客さんがいる手前、熱血講義が始まってしまうとたいへんなので質問はひかえることにしました。


渓谷を走る爽やか列車の旅となるはずだった今回の爆走旅行ですが、蓋を開けてみたらS君のための鉄ちゃん旅行になっていました。


「ものすごい貴重なものを見たキミはすごいラッキーだぜ!」

「転車台と扇形車庫、そしてタンクの三点セットが一か所に残っているのは全国でも少ないんだぜ」


う〜ん、そう言われるとなんか得した気分にもなれます。彼の言う通り、貴重なものが見られたラッキーな一日とすることにしましょう。

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帰路は、米沢から福島県の北塩原村に通じる「西吾妻スカイバレー」を走り帰ってきました。この道は何度となく通った道であり、大好きな道のひとつです。日も暮れようとする6時過ぎ、磐梯山と檜原湖を撮り収めに家路を急ぎました。

(2011.10.30/山形県米沢市・新潟県村上市)

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