その花に雅な薫りあり。

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パサッ、パサッと天から降る花びら。


花びらの近くには香を焚いたような匂いが漂います。


手に取るとちょっとベタつく感じのする花びら。それにグッと鼻を近づけてみると、やや薬臭い匂いがします。この化学臭が距離を置くと香のような匂いに感じられるのか…と不思議な感覚に包まれます。


きっと昔の貴族にとって、この匂いが高貴な薫りと尊ばれたのかもしれない…などと勝手な想像が働きます。そう言えば、家紋などにも桐の花が使われていたことを思い出しました。


自分の住んでいる茨城県南部のとある町。ここはその昔、桐の産地だったと聞いた覚えがあります。確かに家の近くには桐がたくさん植栽されていました。子どもの頃、あれほどたくさんの桐が身近にあったにもかかわらず、この薫りをまったく記憶していません。


たまたま手にした桐の花から意外な発見をしたわけでありますが、まだまだ知らないこと、気づいていないことが山ほどあるのだろうと思います。


「次はどんな発見があるんだろう?」と考えると、人生がちょっと楽しくなるような気がします。

(撮影:2012.5.13/土浦市)

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高貴なスゲだったのね

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見慣れないスゲの一種を目にしました。

名前はジョウロウスゲです。

漢字では「上臈菅」と書くようです。

上臈とは、簡単に言うと身分の高い人や年功を積んだ高僧のことを意味するようです。平安時代中期以降、官人社会において一臈・二臈・三臈という具合に、任官・叙位の順番がつけられていたとか。また、先に任ぜられた者を上臈、後から任ぜられた者を下臈と呼んで区別したそうです。いわゆる先輩後輩という序列なんでしょうかね?

官位の話は別にして、あまりお目にかかれない植物なので話題にしてみました。

聞いた話によると絶滅危惧種だそうです。


(撮影:2012.7.1/土浦市)

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刺刺竹竹/とげとげちくちく…四方竹

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もう何年前になるでしょうか、変な竹を見つけたときのことを今でも鮮明に思い出すことがあります。


その竹はゴムホースよりも少し太いくらい。3メートル強の高さがあり、下の方の節からは牙のような根っこを伸ばしていました。軽くふれると表面に細かい刺があるのがわかりました。


竹の表面はツルツルしていると思い込んでいたので、刺のある竹に強烈なインパクトを感じたものです。


もう一度その竹を見てみたいと思いたち、生えていた場所まで行ってきました。ところが竹は刈られていて、枯れた根元近くだけが残っていました。近くを探して、何本か生え始めているのをなんとか見つけました。


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皮がとても長く、一つの節より上まで伸びています。

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節の所々から三本の芽が伸びています。二本や四本のものがあるのではないかと思い他の竹も確認しましたが、どの竹も必ず三本の芽を出していました。


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この竹は四方竹(しほうちく)という種類のようです。よく見るとホコリのような、細かいゴミにも見えるようなものが表面にあります。実はこれが刺なのです。下から上になぞると、まるで無精ひげをさすっているような感触があります。


一度ふれたら忘れられない竹だと思います。


(撮影:2012.2.26/土浦市・旧新治村)

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クスノキは青かった

noteこの木なんの木 気になる木〜note


昔、日立のコマーシャルにそんなフレーズが含まれた歌が流れていました。


知らない木を見るとその一節が頭に木霊する自分。


この木を見たときもそうでした。

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さて、なんの木?


葉っぱを見るとクスノキです。でも、樹皮が緑ですべすべなんですよ(昔風に言うと青でしょうか)。葉の裏を見て葉脈が合流している部分を観察しました。そこにはクスノキ特有のダニポケットがあります。

(余談:日本の木のなかでダニのすみかとなるポケットがあるのはクスノキだけという話を聞いたことがあります。う〜ん、クスノキって不思議です。虫除けの樟脳の原料になるのに、虫が棲んでいるんですから…。特別なダニなのかしら? ダニはクスノキのために何をしているんでしょ? 知りたいですね〜)


ということで、この木は間違いなくクスノキでしょう。若いときはこんな樹皮をしてるんですね〜。確かに、木の種類によって若いときと老木になったときでは見紛うほど違う外見になるものがあります。クスノキなどは顕著な例だと今回気づきました。

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成長したクスノキはこんな樹皮をしています。この形状がとても印象に残っていたので、緑の樹皮を見た時にはクスノキとは信じられませんでした。

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個人的にクスノキって好きな木です。樹形が素敵ですし、昔から人の暮らしに役立ってきたというありがたみを感じます。たまに葉っぱをクシャクシャして臭いをかぐと、子どもの頃にタンスの引き出しを開けたときの匂いを思い出します。


(撮影:2012.2.5/石岡市)

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生きてこそ、葉は落ちる

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地元の里山を歩いていたら、枯葉がいっぱい付いたコナラの木を見つけました。この時季だとコナラは落葉しているはずなんですが…


なんとなく違和感を覚える自分。


枝を辿っていくと、太い枝から分岐するあたりでグニャリと折れ曲がっています。


なるほど、原因は物理的な障害のようです。


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そうそう、落葉はある種の化学物質によって制御されていると聞いたことがあります。


きっと、枝が折れたことで落葉を促進する物質が供給されずに、そのままになってしまったのでしょう。


ネットの情報によれば、葉の付け根に離層が形成されて落葉が起こるとありました。離層とは細胞質が溶解して力学的に弱くなっている部分らしいです。確かに、紅葉したモミジなどはちょっと力を加えると葉柄の根元からボロッととれてしまいます。離層というものを目で確認したことはありませんが、枝と葉柄の境目に離脱を容易にする構造が出来上がっていることを感じさせられます。


さて、離層を形成させるメカニズムとは何なんでしょう?


ネットの情報では植物ホルモン(生理活性物質)が関係しているとありました。そのホルモンとは、アブシシン酸とエチレンらしいです。


離層形成を促進させるのはエチレン。そのエチレンの合成を誘導するのがアブシシン酸だそうです。


ということは、折れ曲がってしまった枝から先にはホルモンが行き渡らずに写真のような結果になってしまったのでしょう。


それ以前の問題ですが、ホルモンのみならず水分や栄養素も届かなくて枯れてしまったのだと思います。


でも、枯れればすぐに葉が落ちるというわけではなさそう。先入観で「枯れる=落葉」という構図を頭に描いてしまいますが、事実はちょっと違うようです。やはり落葉にはホルモンが大きく関わっているということなのでしょうか? ホルモン(生理活性物質)って不思議なものです。


今回の件では目から鱗が落ちました。当たり前のように思っていたことに意外なメカニズムあるんですね〜

(撮影:2012.1.29)

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侘び桜、寂び桜

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仕事柄、桜のことを考える季節になりました。


思いを馳せていたら、今年の春に見た桜を鮮明に思い出しました。その桜は長野県小布施の友人が、隣町の高山村黒部にわざわざ連れて行って見せてくれたものです。


それは、傾斜地にある田んぼのなかでひっそりと咲いている奥ゆかしい桜でした。枝振りも花の付け方も見事なもので、いわゆる一般的な桜とは違う品種であることが一目見てわかりました。ソメイヨシノとは趣を異にするうっすらと紅を帯びた花。花びら自体もやや小さめで、散る時には粉雪が舞い落ちるような感じがする桜です。


樹齢五百年の江戸彼岸。


幹は岩のようにごつごつしていますが、しなやかに枝を伸ばしています。支え木で押さえられてはいるものの花の勢いはまだ衰えていません。五百年もの長き時を生きてきただけあって風格があります。エドヒガンはヤマザクラと同様に野生種と言われていますから、生命力が強いのかもしれません。まさに美しさと逞しさを兼ね備えた桜と言えます。


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有名なソメイヨシノは、このエドヒガン系(コマツオトメという説もあります)とオオシマザクラを交配した種という説が現在有力です。


ソメイヨシノが人工的に作られた桜ということは多くの人がご存じのことだと思います。桜と言えばソメイヨシノと言えるほど、その人気は不動のもの。言わばトップモデルの地位にある桜といえるでしょう。一方のエドヒガンと言えば、市井の美人と言える桜ではないでしょうか。どちらがお好みかは人によって意見が分かれるでしょう。


美しさにおいては引けを取らないと思いますが、華やかさにおいてはソメイヨシノに軍配が挙がるかもしれません。それもそのはず、数と密集度に圧倒的な違いがあるからだと思います。公園や並木などに利用されているソメイヨシノに対して、エドヒガンがまとまって咲いているところは見かけません。


ところが、高山村黒部にあるエドヒガンにはソメイヨシノに勝るとも劣らない不思議な美しさがありました。田んぼのなかにひっそりと咲いているにも関わらず…

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樹齢五百年と言えば、関ヶ原の戦いより前から生きているということです。長い時間を生きてきた歴史が木に宿っているとは言いませんが、その風貌から漂ってくるたおやかさが見る者の心を震わせるような気がしてなりませんでした。


来る年も来る年も、春先の野良仕事をする農民たちの目を楽しませてくれたエドヒガン。ひょっとすると、雅な心を持った農夫の一人が心の糧にするために植えたものなのかも…そんなことを勝手に想像。だとしたら、いったい何代にわたって地域に人たちを喜ばせてきたのだろうと感動してしまいます。そして時代は変わって現代、今なお大勢の人たちがこの桜のもとに足を運んでいます。


遠くの山を借景に、田んぼにひっそりと咲くエドヒガン。その姿を見ていたら、侘び桜、寂び桜という言葉が思い浮かびました。

(2011.4.30/長野県・高山村 ゴールデンウィークに訪問した小布施の回想…その4)

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麗しの桂、晩秋の森の香水

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数日前の記事に桂の話を書きました。本当にカツラの木(葉)が芳香を放つかが疑問でしたが、その答をようやく確かめることができました。


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前回の記事に書いた滝川渓谷のハイキングでのことです。コースの途上で、とてつもなく甘い香りが鼻をくすぐりました。それは以前のブログにも書いた奧鬼怒で感じた甘い匂いとまったく同じものです。

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その匂いの発生源にあったものは、間違いなく桂の木。数えきれないほどの黄色い葉が散らばっています。丸い団扇型の葉っぱはとても愛らしく、黄色く色づいています。


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さっそく数枚まとめて手に取り鼻に近づけました。ところが、匂いを感じません。念のために裏返してもう一度。すると葉の裏側からかすかに甘い匂いがするではありませんか。間違いありません。森に漂う甘い香りはこのカツラの葉の匂いです。


キンモクセイが秋の訪れを告げる初秋の香りだとするなら、カツラの香りは晩秋を告げる香りと言えるのではないでしょうか。これはまさに森の香水です。あ〜、いい香り。やっぱり自然の匂いって素敵です。


(2011.11.6/福島県矢祭町)

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七色絨毯、桂のかほり

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遠くから眺める山の紅葉はじつに美しいものです。ところが、その紅葉のまっただ中に足を踏み入れると、また違った美しさに出会えます。


紅葉の森にいると頭上や遠景の景色にばかり目が行きがちですが、足元に目を向けると山の紅葉に負けないくらいの色の競演が繰り広げられているのです。


ケヤキの下は鈍い赤茶、ミズナラの下は黄色、シラカバやダケカンバの下は明るい黄色、そしてモミジの下は鮮やかな赤が広がっています。樹木が混生しているところでは色が入り交じった複雑な色を表現しています。


森の入口から奥深くへ歩みを進めていく過程で、さまざまな色の絨毯を踏みしめていくことになるわけです。その色の変化を楽しんでいると、長い道のりもあっという間に終わってしまうような気がします。


さくさくと踏みしめる落葉の音や枝を踏み折る小気味よい音を聞くのも愉快なものです。そばを流れるせせらぎ、時折聞こえる鳥の声など、耳を澄ませると森のなかはいろいろな音で満ちあふれていることにも気づかされます。


はらはらと舞い落ちる葉が目に飛び込んでくることもたびたび。その様子は、秋の終わりに向けて時を刻む秒針のようにも見えてくるから不思議なものです。


楽しみは見ることだけにとどまりません。森のなかを歩いていると、ところどころでなんとも言えぬ甘い香りが鼻をかすめていきます。前を歩いている素敵な山ガールから漂ってくる香水なのかと思いましたが、距離を置いたり時間をずらしたりしても同じ場所から同様な香りを感じます。


その時ふと、あることを思い出しました。「カツラの木は黄葉すると芳香を放つ」という一節。植物図鑑に書いてあった解説の一文です。芳香という曖昧なイメージが一気に具体化しました。


この甘い香りはカツラの匂いに違いない。そう思い込んでしまう自分。また一方で「断定するには材料不足だ」と戒める自分。事実を確かめるために周辺の樹木に目を配ります。カツラの木はあることはあるのですが、その落葉を拾い上げて鼻を付けても甘い香りは感じられません。


納得はいかないものの、カツラの芳香というイメージを拭いきれません。この件についえは今後事実を確かめるということで、宿題という形にすることにしました。

(2011.10.23/日光市)

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赤富士と白い花

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富士山の五合目より少し下に「奥庭」という場所があります。ここは天狗が遊んだ庭ともいわれ、ちょっと不思議な風景が広がっています。人の背丈ぐらいのカラマツやコメツガ、ダケカンバが生えていて、まるで庭ごと盆栽といった雰囲気です。


ここの標高は2150mくらい。富士山の森林限界は2400mくらいと言われているようなので、奥庭は森林限界よりも少し下みたいです。でも、背丈の低い樹木から森林限界が近いことを感じますね〜


間近から富士山を仰ぎ見ると赤い肌をしているのがわかります。その色はいかにも溶岩の色といった雰囲気です。


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訪れた日は天気がよくなかったので雲が広がっています。雲海の上に姿を現した遠くの山々の頂を見ると、高い山を征服したアルピニストの気分が味わえます。


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標高2150mの奥庭から「お中道」という道を経由して「御庭」と呼ばれる場所に出ます。このあたりは子どもの身長くらいのダケカンバやカラマツばかり。地を這うように生えている様子を見ると、このあたりの過酷な環境とそれに耐えながら繁殖を重ねている樹木の生命力を感じます。


少し上に目をやると、樹木が山頂を目指して登っているようにも見えます。噂によれば、温暖化の影響で富士山の森林限界が少しずつ上に上がっているとか…


「御庭」周辺を歩いて感じるのは、やけにカラマツが多いということ。聞いたところによると、御庭あたりの標高だと本来はハイマツが生えていてもいいらしいのですが、なぜかカラマツばかり。これはどういう理由なのでしょうか。


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さて、溶岩の斜面に逞しく根を生やす樹木の根元には、ところどころに白いものが密集しています。遠くからだと小さなカリフラワー畑にも見えてしまいます。


これは明らかに地衣類の群落。たぶんハナゴケと呼ばれるものの仲間だと思います。


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詳しくはわかりませんが、ミヤマハナゴケかもしれません。近くで見ると海綿のようにも見えますね〜


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地衣類のなかには樹状の形態を見せる種類がいくつかあるようです。


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こちらは御庭から富士山五合目駐車場に至る道で撮影したもの。このあたりは紅葉真っ盛りでした。


(撮影:2011.10.13/山梨県鳴沢村)

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樹皮に潜んだ万能細胞?

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尾瀬を歩いていて不思議なものを目にました。


つる性の大きな植物が木に巻き付いているのかと思いました。しかし、よく見ると明らかに樹皮の一部分から伸びています。


何かしらの寄生植物? いや、違います。


いわゆる根っこのような感じ。植物のなかには板根、支柱根、気根、呼吸根、水中根という具合に、さまざまな形態の根っこを生やす種類があるそうです。


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ダケカンバでしょうか。この木は樹皮が大きく剥がれています。その一部分、残された樹皮の端の部分が変形して根のような形態に変化しています。


これはまさに植物の逞しさ、臨機応変の対応力を感じさせる生体反応ではないでしょうか。今話題の万能細胞が樹皮に備わっているのではないかと思わせます。さすがに古代から連綿と命をつないできているだけあって、驚異的な能力を隠し持っていると言えそうです。


樹皮を根に変えて生きていく。この姿に生命の強力なメッセージが込められていると感じるのは私だけでしょうか?

(撮影:2011.8.9/福島県檜枝岐村)

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