遠くから呼ぶもの…富谷観音三重塔 彫刻そして絵馬・信仰の証

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しばらく前から続いている桜川市の富谷観音のお話です。今回で最終回にしたいと思います。

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今まで、国の重要文化財である柿葺きの三重塔の話ばかりでしたが、他にも注目したものがあったので記述します。それが本殿の正面にある龍の彫刻。


この龍はかなり精巧に彫られていて、さぞや名のある彫り師が手がけたのではないかと想像してしまいました。口と舌、髭、鱗、そして蛇腹の形状など、よくもこれほど手を抜かずに彫り上げるものだと、思わずため息が出ました。


龍は白く見えますが、所々に緑色をした部分があります。もともと緑で色褪せて白くなったのか、それとも緑の部分は苔なのか、どちらなのかはわかりません。


龍は天に昇る前は青龍で、珠を得て降りてくるときは黒龍に、そして齢を重ねると白龍になると聞いたことがあります。もし、彫刻の龍が白龍ならそうとう位の高い龍なのかもしれません。

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この本堂には複数の絵馬が奉納されています。お寺によっては絵馬堂という建物に飾っていることがあるようですが、富谷観音では本堂がそれを兼ねているようです。


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絵馬を見ると、屈強な武者が物の怪を退治していたり


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武者同士が戦っていたり


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天女が描かれていたり


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如来か菩薩か天女か判別つきませんが、ご来迎の図があったり


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龍と女と武者が描かれていたり…


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説話や伝説、昔話に因んだ絵なのでしょうか? いろいろなものが奉納されています。


絵馬というと、お寺に何かの願をかけて、それが成就したときにお礼として奉納されるようです。そのことを考えると、絵馬に描かれていることは掛けた願に因んだことが描かれているのかもしれません。


一言で表すと悪霊退散、仏の加護、戦勝祈願というようなものでしょうか。災いを退けてもらったお礼、敵に勝利したお礼、ご利益を受けたお礼、救いを差し伸べてもらったお礼など、絵馬からいろいろなことを想像するのが楽しいです。


とにかく、これだけの絵馬が奉納されているのですから、多くの人が信仰を寄せていたお寺なのだろうと想像がつきます。


もうひとつ余談ですが、同寺の仁王門にある像は修復中で見られませんでした。通りかかった人の話だと、かなり立派なものなのだということです。機会を見てまた訪れてみたいと思いました。


(撮影:2013.2.3/桜川市)

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遠くから呼ぶもの…富谷観音三重塔 塔は何を伝えるのか


前回からのつづき、桜川市の富谷観音の話です。

前回に記述した通り、三重塔は室町時代に再建されたと伝えられています。現存する塔が再建時のままとは思えませんし、各所に修繕の手が加えられていることでしょう。


よく見ると、組み物のいたるところに色の違う新しそうな木材が見て取れます。これは明らかに最近修繕されたような感じです。気になるのは、古さを感じさせる黒い木材です。こちらは果たして室町時代のものなのでしょうか?

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いずれにしても、きれいに修繕されていることは確かです。もう少し時が経てば、新しい木材も古びた色に変わって全体的には落ち着いた雰囲気になるのではないでしょうか。このような修繕をするのは宮大工の仕事なのでしょうけど、たいした腕だと思います。そのような技と匠が今後も継承されてほしいと切に願います。

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さて、塔の下層の部分に目をやると上層部とは雰囲気が違います。なんとなく色褪せた感じと古さが漂ってきます。特に目立つのが柱です。柱に使用されている木材はかなりの古さではないでしょうか。ひょっとすると、この柱は室町時代のものかも…と思ってしまいます。修繕が加えられているとはいえ、柱は取り替えるのがたいへんでしょう。継ぎはぎすることは可能かもしれませんが、この柱はそんな様子が見受けられません。


橋の欄干のような部分にある擬宝珠は、鉄製ではなく木材です。しかもちょっと変わった形をしているのが気になりました

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そうそう、柱が気になったので土台部分も見てみました。それぞれの柱は礎石の上に載っているだけです。気になる中心の柱は暗くてはっきりと見えませんでした。2年前の大震災で損傷・倒壊しなかったというのはすごいことだと改めて思いました。


(撮影:2013.2.3/桜川市)

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なぜ、親子は恐山を目指すのか?

「恐山に行ってみた〜い!」


「よっしゃ、行ってみっか!」


そんな会話をした娘と父親は…


ゴールデンウィーク中のとある日の早朝・午前3時、薄暗いなか車のエンジンをかけて北へ向かいました。


茨城から秋田の角館〜田沢湖〜八幡平〜青森〜大間と各所に寄りながら、恐山に着いたのは翌朝の7時。


爆走と言うか、暴走と言うか、ある種のバカとしか言いようのない旅をしてきました。


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恐山、それは親子にとって未知の場所でありました。しかし、情報化社会と呼ばれる現代において、恐山に関する情報はいろんなところから入ってくるものです。その情報をもとに、自分のなかで勝手に恐山のイメージを作り上げていました。


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娘が恐山のイメージをどのように描いていたかは知りようがありませんが、私のイメージは今回の暴走旅行で大きな音を立てて崩れ去ってしまったのであります。

どのように崩れたかは説明すると長くなるので、今回書くのはやめておきます。というか、改めて書きたいと思います。


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今回はそのプロローグとして、旅のきっかけとなった恐山の写真の掲載に留めることにします。


心と時間、体力的な余裕があったら、次回から順を追って「暴走の行程」を紹介していきたいと思います。


(撮影:2012.5.6/青森県・恐山)

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水軍の国とキャベツ王国

前回のつづきです。

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伊勢神宮を発ったあとバスは最寄りの五十鈴川駅に停留。この近鉄の鳥羽線の駅で降車して電車に乗り換え鳥羽に向かいます。


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関東に住んでいると、近鉄と言うと野球の球団名(古い!)しか思い浮かびません。ところが、実際に車両に乗ったり駅を見たりすると、JRよりも路線や本数が充実していて駅なども豪華であると感じます。


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茨城感覚だと、鉄道は何を置いてもJRが一番で、私鉄はそれを補う路線と思いがち。今回の旅で、そのような発想がとんでもない先入観であることがわかりました。そうなんです、近鉄ってものすごい大企業なんです。


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さて、鳥羽にはJRと近鉄の駅がありますが、JRの駅を撮ってきました。


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こちらは近鉄の鳥羽駅です。私たちは駅から伊良湖行きの伊勢湾フェリーに乗るため、乗り場まで歩いていくことになります。


(余談ですが…鉄道の旅をして車両や駅の写真を撮ることは、意外にも楽しいことだと感じるようになった自分。決して鉄道マニアではありませんが、鉄ちゃんの世界を足を踏み入れてみるのもいいのではないかと思い始めるようになりました)


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鳥羽には有名な真珠会社「ミキモト真珠」の立派な建物や「鳥羽水族館」があって活気にあふれていました。


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鳥羽駅からフェリー乗り場まで歩いていく途中には遊覧船乗り場などがあります。


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道すがら海岸や湾の様子をぼんやり眺めていると、水軍が活動するには絶好の地理なのではないかと感じました。歴史には疎い自分ですが、近代化された現在の街並の隙間から、古い歴史の面影が見えてくるのがおもしろかったです。


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伊勢湾フェリーのデッキからの眺めです。


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いよいよ出航。伊良湖まで55分の船旅の始まりです。


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今風に言うと、「鳥羽〜伊良湖間 約一時間の伊勢湾クルージング」なんて表現するのかもしれませんが、鳥羽港を出港してから沿岸の様子が見える間は、自分が水軍の一員になって漕ぎ出したような気分になりました。


静かな内海には、見晴らしの利く小高い山、舟を係留するのに絶好の場所がそこかしこに見られます。こりゃ、まさしく水軍の基地です。


そんな歴史ロマンをかき消すかのようなものすごい轟音のディーゼルエンジン。沿岸の様子が見えなくなってからは、クルージング気分に切り替えて水平線を眺めることにしました。海上にはとてつもなく巨大なタンカーや客船が航行しています。間近に見えるわけではありませんが、遥か遠くからでもその船体が想像以上に巨大であるのがわかります。


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さて、出航から1時間もしないうちに伊良湖に到着。


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ここは道の駅になっていて、私たちはここからバスで豊橋まで向かう手はずなのですが、実はこの場所で実に愉快なシステムを体感することになります。


まず、フェリー到着の数分前にバスが豊橋に出発してしまうこと。タッチの差で乗れない仕組みです。したがって、お昼間近なので当地で昼食をとることになります。昼食にカレーを食べたのですが、量が少なくて満足できません。こうなるともう一品注文することになります。カレーをもう一杯というのもなんなので、違う店でラーメンをいただきました。


スムースな接続を回避することで、必ず昼食をとったりお土産を買うように仕向ける仕組み。ビジネスの基本が徹底されていることには脱帽しました。ですが、こんな仕組みに取り込まれる人たちはごく少数です。ほとんどの人たちはマイカーとともにフェリーに乗り込んでいます。私たちのように体ひとつで乗り込んでいる客はごくわずか。


フェリーに乗り込んだ時に、「やけに乗客が少ないなぁ」と感じていた自分。その理由は、車を載せられる数が決まっているからでした。車に乗ってきた人数しか乗船しないので、乗客数が極端に少ないようです。


マイカーでない人は伊良湖からバスに乗るしかありません。伊良湖から最寄りの駅は豊橋鉄道渥美線・三河田原駅あるいは東海道本線・豊橋駅です。私たちは豊橋駅まで路線バスを利用することにしました。


伊良湖から30〜40分の間、渥美半島の各停留所をぐるぐる、ジグザクとめぐります(終点の豊橋駅までは2時間近くかかります)。その間、風力発電の巨大プロベラがずらりと並んだ場所や三河湾が見渡せる道を行きます。この途中、ず〜っと目に入るのがキャベツ畑。あまり肥沃とは思えない砂礫の土壌にびっしりとキャベツが栽培されています。その様子は、キャベツの国に来てしまったような印象。愛知県がキャベツの大産地であることを今回知りました。


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さて、豊橋に到着です。はじめて豊橋に降り立ちましたが、想像以上に都会的な場所でした。


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ここからは東海道本線で東京に向かいます。


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途中、掛川駅で乗り換えがありました。


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時間が少しあったので駅前を散策。静かな地方都市といった雰囲気の暮らしやすそうな町です。


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乗り換えの電車に乗り込み、東京に向けて再出発。


このあと、数回の乗り換えを経て地元に帰ってきたのは11時近く。翌日の出勤を思うとなんとなく憂鬱な気分になりましたが、ことのほか充実した旅の内容を振り返ると、重苦しい気分もなんとか振り切ることができました。また今回のような旅がしたい。そう思える二日間でした。

(撮影:2012.3.11)

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そこそこの旅、ぎりぎりの旅/各駅停車で行く松本〜名古屋〜伊勢 一泊二日

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旅に出ました。


今回の旅は、限られた時間と予算でどれくらいの喜びを味わえるかを試す道のりでした。「過酷な旅」と言えばその通りです。


いわゆる“旅行”というものは、ゆとりを持って時間を過ごし、心身ともにリフレッシュするものなのかもしれません。しかし、一度たりともそんな旅行をしたことがない我らは、いつものように「行け行け、go! go!」をモットーにひたすら突き進む道を選んだのでした。


旅の内容はというと…


今回も例のごとく、毎回同行している鉄道マニアのS君と出かけました。JRで販売している「青春18きっぷ」で一日乗り放題。「行けるところまで行ってやろうではないか!」というのが主旨であります。


コースについては、前もって折り返し地点は決めておきました。それが伊勢です。伊勢神宮にお参りして帰ってくるというのが今回の大きな目標でした。


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時間的にも金銭的にもぎりぎりの予算ではありますが、それなりに充実感を味わいたいという貧乏根性が顔をのぞかせます。そこで適度に味付けをして「ぎりぎり旅行」を観光気分あふれる「そこそこ旅行」に仕立て上げることにしました。


初日の伊勢到着までに、以下の3つを付け加えました。

1、松本城の観光
2、中山道の宿場町「奈良井宿」の散策
3、名古屋のソースかつ


帰路にも多少の味付けを施しました。それが以下の点。

1、鳥羽から伊勢湾フェリーで伊良湖へ
2、伊良湖からバスで豊橋へ


往路は中央本線、帰路は東海道本線を利用することで景色の変化も楽しもうという魂胆でありまする。


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そうそう、鉄道の旅のいいところは眠くなっても生死に関わることがないという点。車の旅の場合、居眠りは命を落とす可能性があります。その巨大なリスクを回避できることを考慮すると、自由が利かないこと、多少の退屈さや乗り継ぎの忙しなさは仕方がないことと諦めがつきます。


さて、今回のぎりぎり旅行の道のりについては次回報告したいと思います。


(撮影:2012.3.10)

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鉄ちゃん垂涎の終着駅/「旅を見つける旅」完結編(後編)

“仕事”という暴走列車の通過待ち合わせのため、ブログの更新が大幅に遅れました。


「旅を見つける旅」の後編は、これといった盛り上がりもなく淡々と終着駅に向かう道のりを紹介することになりそうです。


渓谷を走るローカル列車の車窓の向こうに見える絶景。燃えるような紅葉を想像していた私の目に映ったのは…



山形県の米沢を出発した米坂線・キハ110。すでに新潟との県境に近づいています。このあたりは渓谷の景色としてはクライマックスの区間です。ところが、ところがです。この区間はあまりにもトンネルが多い区間で、渓谷の景色を長時間眺められないのです。うぉ〜っ、なんたる誤算!


よ〜く、道路地図を見ていればそんなことにすぐさま気がついたはず。とほほ。


どちらかというと、自分は不注意且つおっちょこちょいの性格。忘れていました。自分の特性を。


正直に申し上げましょう。米坂線に乗る自分を想像したときから、頭のなかは紅葉の景色一色に染まってしまい、ほかに何も見えなくなっていました。

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呆然としている自分を鼓舞しながら、やっと撮ったのがご覧の一枚。ローカル線と言えどもそこそこのスピードが出ています。自慢のデジカメ・リコーCX3ですが、私の眼力と腕が悪いせいでワンテンポ遅れたシーンしか収められません。ほんの数カット撮影して諦め、座席にもどっておとなしくしていることにしました。


渓谷を造る荒川は、新潟県に入ってしまうと川幅がグンと広がり、緩やかな流れになります。その景色が予想外に素敵な景色で、思わず見とれてしまいました。


見とれてしまう=写真は撮っていない。そうなんです、カメラを構えることさえ忘れ、ぼぉ〜っと眺めてしまいました。


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そして、ローカル線の旅は終着駅・坂町駅でいったん小休止となります。

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ここが坂町駅のホーム。静かです。とても静かです。

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とりあえず、挨拶代わりに駅の風景を数枚カメラに収めることに。

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ところが、ここに写った風景の一部が鉄ちゃんのS君を異常に刺激することとなります。


それがこの風景。一般の方にはどうということはない駅周辺の風景でしょう。

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さらにもう一枚。こちらなど、外壁が落ちて崩れかかっている廃工場って感じです。でもここにはS君をとてつもなく熱くさせるものが写っているのです。


「あそこまで行こうぜ!」。そう言うなり歩き始めるS君。雨がぽつりぽつりとするなか、上着のフードを被ってついていく自分。

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坂町駅の改札をいそいそと通り過ぎ、駅前を歩き始めるおやじ二人。

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坂町駅前はホーム以上に静かでした。広い駅前通りです。高い建物がないことも影響しているせいか、妙に開放感がある駅前です。地方の駅らしくてとても好感が持てます。人によっては寂しい駅前と言うかもしれませんが、自分はこんな空気感がとても好きです。


そんな郷愁に浸っている私のことなどおかまいなしにS君はすたすたと先を急ぎます。

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待ってました! と言わんばかりの距離に、向こう側に渡る跨線橋があります。まるで仕組まれたかのような展開です。こうなると、S君を主人公にしたストーリーが繰り広げられるのは火を見るより明らかでした。長年の付き合いでこうしたことが度々、しかも突然起こることが幾度となくありました。まるでデジャヴを見るような気分の私…

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「見ろよ! これ。何だかわかるかい?」


「はぁ〜ん、タンクだな」


「そうだよ。でも、ただのタンクじゃないぜ。これはよぉ〜、SLの水を補給するタンクなんだぜ」


しばらくしてわかったことですが、坂町駅を区間に含む羽越本線にはイベント用のSLが走っているそうで、今でもこのタンクは現役で活躍しているそうです。そんな情報さえ、S君にかかれば瞬時に収集可能なのです。恐るべき鉄ちゃんの行動力。帰路につく前、駅員と何やら親密に話しているS君の姿を見たので、その時聞いてきたのだと思います。

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S君を異様に熱くさせた物体をアップにしてみました。この緑色の小さな橋のようなものが彼のエナジーを一気に開放させることになります。


「これはよぉ、転車台って言うんだよ」


この緑の台の上にSLを載せて回転させるそうです。電気機関車・ディーゼル機関車の導入で不要になり各地で撤去が進んでいます。


「きみ〜っ、こりゃぁものすごい貴重なものを見たってことだぜ!」


超ど級の興奮状態に面食らい、返す言葉もない私にS君は次の鞭をくれます。

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「見ろよ、これ! これなんだかわかるか? ここにSLがずらりと並んでいたんだぜ!」


単なる廃屋、いや廃工場だと思っていたものは「扇形車庫」と呼ばれるものだそうです。写真の左下部分を見るとわかるように、二本のレールが扇状に車庫へ伸びています。ちょうど転車台が扇の“要”の部分と言えるのではないでしょうか。


さらにヒートアップするS君。


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車庫の脇で何かを叫ぶS君。両腕を天に伸ばし垂直に振り下ろしています。その二本の腕は鉄道のレールを意味しているようです。


「この車庫の脇にもうひとつ車庫があったんだぜ。その証拠に線路の形跡がある!」


もう独壇場です。誰も止めることはできないでしょう。


並の人が聞いたら“どん引き”間違いなしの大袈裟な身振り付きの解説。ここで私も一歩下がって冷静に聞いていたいところですが、半歩ぐらい前に身を乗り出してしまいます。そんな微妙な反応に、鉄ちゃんの素質が潜んでいる自分を感じてしまいました。

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一通りの熱い解説を終えたS君は、満足げに坂町駅に戻っていきます。足元には鮭が彫られたマンホールの蓋がありました。そこには荒川町と書いてあります。すでにここは村上市になっているはずですが、マンホールの蓋はそのままのようでした。

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坂町駅から米沢へ帰る気動車はE120のオレンジの車両でした。

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こちらは羽越本線を走る車両。電気機関車ですね。詳しいことはわかりませんが、これはかつて常磐線を走っていた車両と同じではないでしょうか。色は違いますが、とても懐かしく思いました。正直に申し上げて、現在の常磐線の車両より写真の型の車両の方が私は好きです。

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こちらは今泉という駅で停車したときに撮った車両。雪かき用の車両でしょうか。ラッセル車というのかもしれません。詳しくはS君に聞けば何でも教えてくれるのですが、車両には他のお客さんがいる手前、熱血講義が始まってしまうとたいへんなので質問はひかえることにしました。


渓谷を走る爽やか列車の旅となるはずだった今回の爆走旅行ですが、蓋を開けてみたらS君のための鉄ちゃん旅行になっていました。


「ものすごい貴重なものを見たキミはすごいラッキーだぜ!」

「転車台と扇形車庫、そしてタンクの三点セットが一か所に残っているのは全国でも少ないんだぜ」


う〜ん、そう言われるとなんか得した気分にもなれます。彼の言う通り、貴重なものが見られたラッキーな一日とすることにしましょう。

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帰路は、米沢から福島県の北塩原村に通じる「西吾妻スカイバレー」を走り帰ってきました。この道は何度となく通った道であり、大好きな道のひとつです。日も暮れようとする6時過ぎ、磐梯山と檜原湖を撮り収めに家路を急ぎました。

(2011.10.30/山形県米沢市・新潟県村上市)

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「旅を見つける旅」完結編(前編)

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この地に立ったのは一年前の約束を果たすため…


そう、あれは昨年の10月のこと。新潟の村上市から山形の米沢へ向かう際、国道113号を通った時の約束でした。別に誰かと交わしたものではなく、自分自身に誓ったものです。


別名越後街道、または小国街道とも呼ばれるその道は、荒川によって作られた渓谷に沿って走る道でした。道路地図には「荒川峡」と記されています。この道とほぼ並行して走っているのが米坂線というJRの路線です。


昨年、道を走りながら考えていたのが、この米坂線の車窓から紅葉の渓谷を眺めること。乗ったことのないローカル線から見る風景を想像していたら、どうしても乗りたくなってしまいました。


というわけで、約束を果たすために米坂線の始発駅・米沢へと向かったのでした。


米沢へは何度も足を運んでいるのに、なぜか駅はしみじみと見たことがありませんでした。せっかくの機会なので列車が出発するまでの時間を利用して、軽く散策してみました。

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駅前から二つの道が市街地へと伸びています。日曜日というのに人や車の通りはそれほど多くはありません。人口約9万人(89009人・23年10月現在)の市としては駅前の往来がとても静かです。

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目を引いたのは竜宮城のような旅館というかホテルです。「おとわ」という名称が写真から読み取れます。これはかなり気になるお宿です。ネットで調べてみたところ、創業は明治三十年、国の登録文化財にも指定されているホテルでした。う〜ん、お金があれば一度は泊まってみたいです。


失礼…話がそれました。

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では、駅前に翻る「毘龍」の旗に見送られながら旅路を進もうではありませんか!


いやぁ、さすが上杉の城下町です。戦国時代に上杉家の軍旗に揮毫された“毘”と“龍”を駅前で見られるなんて…。こんな鼓舞を受けると、いやが上にも旅の気分が盛り上がってきます。

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でも、ホームは閑散としていました。やはり車社会の影響はこんなところにも表れているんですね。

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こちらが米坂線の車両です。気動車というのでしょうか、ディーゼルエンジンの車両(キハ110)です。現在は新しいデザインの新車両ですが、数年前まで「キハ28、40、47、48、52、58」と呼ばれる気動車が活躍していたそうです。できればその車両に乗ってみたかったなぁ…


ちなみに米坂線は、山形県米沢の米沢駅と新潟県荒川町の坂町駅を結ぶ約90kmの鉄道です。区間内には20の駅があります。ついでと言っては何ですが、車両内の様子をご紹介。

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と、まぁこんな感じです。


そうそう、今回の旅は昨年10月と同じくS君が同乗しています。じつは彼“鉄ちゃん”です。彼の呪文に惑わされたのかどうかは定かではありませんが、知らず知らずのうちに私も鉄ちゃんの階段を上り始めたのかもしれません。まぁ、上り始めたと言ってもまだ一段目をうろちょろしている程度ですが…


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車内ではくつろいだ地元のみなさんの姿が見られました。向かいの席に足を投げ出している方が多数いらっしゃったのでちょっと安心。


何が安心したかって? こんなことをするのは常磐線を利用している我らだけかと思っていたので…


ほっとしたところで、お腹がすいてきました。そこで車内でランチタイム!


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いただいたのはご覧の駅弁「牛肉どまんなか」。すんごいストレートなネーミングです。“豪速球”と呼んでいいほどの商品名。しかもど真ん中ですから超ストライクでしょう。ほら、お弁当の中身を見れば、もう返す言葉がありません。

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きっと「どまんなか」とは山形名産のお米の銘柄のことだと思います。「牛肉+お米」では単なる牛丼。「牛肉+銘柄米」でこそ成り立つ素晴らしい商品名です。うむ〜、ここはやっぱり別の銘柄米「はえぬき」ではダメだったんでしょうね。


しつこいようですが、英語の表記も見逃せません。


BEEF DOMANNAKA


こりゃまたストレート。じつに爽快です。個人的にはこのような潔いコピーは大好きです。外人さんに意味が通じるかどうかなんて、どうでもいいんです。つまりは雰囲気というか勢いです。外人さんだって食べりゃわかるわけですから。味を気に入ってくれれば、次に買い求める時に便利です。店の人に「ビーフ ド・マ・ン・ナ・カ アリマ〜ス〜カァ〜」と言えば済むわけですから。


売る方だって理解しやすいです。「オ〜、コレデ〜ス〜ネ〜、ド・マ・ン・ナ・カ」。


そんなやり取りが目に浮かびます。この商品名は大正解です(きっと)。


あれ? 話がすごくそれてしまいました。これぞホントの大脱線です。ではここらでポイントを切り替えて、続きは次回に致します。終着駅はどこになるのか? 意外な展開が待ち受けているような気が…

(2011.10.30/山形県米沢市)

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信濃の暁

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信濃の春は遅い。

冬の山は雲を呼び、

雪が山を鎖すから。

麓で花が咲き乱れていても

山の上では木々が芽吹いたばかり。

だけど、春はすぐそこまで来ている。

でもね、ちょっと目をそらしたら

見失ってしまうかもしれないよ。

遅れた春は雪融けと一緒に

駆け足で通り過ぎてしまうから。



ゴールデンウィークに小布施の友人を訪ねたとき、彼が志賀高原に連れて行ってくれた。道路に雪はなかったが、斜面には信じられないほどの雪が残っている。リフトが何本も動いていて、スキーを楽しむ人の歓声が遠くから聞こえてきた。


「今年はいつもより雪が遅くまで残っているなぁ」


地球温暖化が世間で問題視されているけど、逆に寒冷化が進んでいるのではないかと友人は話していた。


確かに自分たちが子どもの頃は、地球は氷河期(小氷河期?)に突入しようとしているという話もあった。子どもながらに、将来はどうなるんだろうと心配になったものだ。それがどうだろう、今では温暖化が進行しているというんだから訳が分からない。


そんな経験から学んだことは「科学は絶対ではない」ということ。科学が証明することの大半は信用できるが、自然現象を予測したり解明したりすることはとても難しいことなんだと感じる。



今回の小布施の旅で発見したことがある。それは山の斜面を彩る薄い赤紫の木々の芽吹きの美しさ。山の中腹一面に広がる萌芽の色は、雪山に春が訪れたことを告げる印のひとつだと思う。


世間は秋の紅葉をもてはやすが、春の山々の芽吹きにも勝るとも劣らない美しさがある。あでやかな色で心を躍らせる紅葉もいいけど、色は薄いが生命力を感じさせる春の萌芽も捨て難い。紅葉に対して萌葉という言葉があってもいいのではないだろうか。


さて、萌葉の正体について…

目が衰えてきたので遠くからだとなんの木が芽吹いているのかわからなかったが、友人がいろいろな場所に連れて行ってくれたおかげでなんとなく推測できた。


薄い赤紫に見える萌芽のほとんどは、たぶんシラカバ・ダケカンバなどのカバノキ科の植物だと思う。今回の旅でカバノキの仲間に対する見方がちょっと変わった。山の斜面に広い面積で群落を形成していることに驚いたが、春の芽吹きの美しさの感動はそれ以上。春先に山を訪れる楽しみがひとつ増えた。それと同時に、早春の志賀高原にまた来たいという気持ちが大きくなった。



写真は「信州のサンセットポイント100選」のひとつ、横手山より撮影。向こうに見える山並みを越えると越後国かぁ〜


左側にある山は「高社山・こうしゃさん」と友人が言っていました。確か登ることもできるとか…


友人の双眼鏡を借りて覗いてみたら、崩れそうな岩場があってちょっと危なそうな雰囲気。でも、なんだか登ってみたくなる山です。

(撮影:2011.5.1/志賀高原・横手山/ゴールデンウィークに訪問した小布施の回想…その3)

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江戸のウッドデッキに雨を見る

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雨の日は嫌いじゃない。

風景が違って見えるから。

町をきれいにしてくれるから。

雨の日と晴れの日と曇りの日と

きっと同じくらいあるのだろうけど、

雨をじっくり見る日は少ない。

濡れるのが嫌だから?

冷たいのが嫌だから?

薄暗いのが嫌だから?

だったら二階の窓から見るといい。

雨に塗られて様変わりした

別の景色が見えるから。



「雨の日の小布施もいいものだ」


そう思わせてくれたのが、高井鴻山記念館の二階から見た景色。向こうには山が迫り、近所の濡れた瓦が鈍く光っている。庭を歩く人の踏みつける砂礫が、晴れた日とは違うしっとりとした音を響かせている。

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江戸時代末期に建築されたという屋敷には、二階部分に縁側のような廊下がある。張り出た庇が、いかにも日本古来の家の造りを感じさせる。解釈が間違っているかもしれないが、まるで屋根付きのウッドデッキにいるような雰囲気がある。江戸時代のウッドデッキと思えば、なんとも粋な造りだ。こんな場所から景色を愛でるのは、なんと贅沢なことだろう。


雨上がりの小布施を歩くのもまた格別な趣がある。

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晴れの日ばかりの旅じゃつまらない。雨に濡れた別の顔を見られたことに感謝するべきなのかもしれない。


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高井鴻山は幕末から明治にかけて活躍した小布施の豪商だそうで、幕末の志士や文人墨客と幅広い交友関係があったということだ。そのなかでもとりわけ有名なのが葛飾北斎との関わりだろう。北斎と小布施の関係は広く知られているが、その元を質せば高井鴻山が北斎を招いたことに行き着く。小布施に行ったら北斎館を観るのはもちろん、高井鴻山記念館にも足を運ばなければなるまい。鴻山が描いた妖怪画もじっくりと味わいたいものだ。


(撮影:2011.4.30/ゴールデンウィークに訪問した小布施の回想…その2)


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鳳凰が飛び立つ町

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葛飾北斎が晩年の一時期を過ごした信州小布施。この町には八方睨み鳳凰図がある。それは岩松院というお寺の本堂の天井に描かれている。なんと二十一畳もの大きさの迫力ある大作だ。


鳳凰と言えば空想上の生きもの。この世には実在しない霊獣である。数々の物語に登場するほか、お寺などの彫刻に施されて馴染み深い存在でもある。しかし、どこか現実離れをした色彩と姿に、ちょっと距離を置いて見てしまうものだ。


ところが、岩松院の鳳凰はちょっと違う。生々しく迫力があり過ぎて、実際に生きているものを描き写したかのように思えてしまう。そのせいか、空想上の生きものよりもっと身近に感じられる。


自分にとって、鳳凰と言えば小布施の天井画が真っ先に思い浮かんでしまう。睨みつけるその鋭い眼光は、よく見るとどこか無機的で“虚空”を感じさせる。怒りや畏れ、猜疑心といった色はどこにもない。鳳凰の目は、晩年の北斎の目のようにも感じられる。


八十の齢を越えて筆を執る精神力。当時の八十と言えば人並みはずれた経験を積んだ長老とも言える存在であろう。そんな北斎が、当時の世の中を静かな心で覗いているような気がしてならないのである。



今年のゴールデンウィークに訪れた小布施。信州北部、いわゆる北信の観光地として有数の集客力を誇る町である。多くの人たちが憧れや羨望をもって訪れるのであろうが、自分はそんな気持ちで足を運んだわけではない。単に、友人の住む町だから遊びに来ただけ。


家族や恋人同士が連れ立って歩いている町のなかを自分は違う感覚で歩いていたと思う。観光客の目ではなく、単なる遊び客としてゆったりと眺めてきた小布施の印象を気が向いたときに綴ってみたいと考えている。


思いついたら書くし、気乗りしなかったら書かない。それもまた小布施的であると解釈している。

冒頭の写真は岩松院の仁王門。五月の朔日にまだ桜が咲いていて、鳳凰の羽ばたきが花びらを舞い上げているように感じられた。

(2011.5.1/長野県小布施町)

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